ウサギの不正咬合
ウサギはげっ歯目ではなく、重歯目に分類されます
上顎の切歯(前歯)が二重になっているのでそう呼ばれており、歯は全部で28本です
(人も28本ですが内容が違う)
また、乳歯から永久歯への生え変わりは母胎内もしくは生後直ぐに行われる為、基本的に私たちが見る事はありません
ウサギの歯は常生歯といい、常に伸び続けます
噛み合わせがキチンとしていれば、上下の歯がかち合って摩耗していくので、伸びすぎてしまうということはありません
切歯は上の歯が前、下の歯が後ろに有るのが正常です
(ウチのウサギですが、右上顎切歯に牧草のカスがついてて恥ずかしい)
下顎が前に出ている(シャクれている)子は上下の歯が噛み合わず摩耗しない為に、切歯が伸びすぎてしまいます
こういった場合は定期的なカットが必要になります
間隔はその子によって異なりますが、約1ヶ月間隔の子が多いです
切歯のカットにはマイクロエンジンとダイヤモンドディスクを使います
昔はニッパーで切っていた先生も多かったようですが、歯根がダメになったり変なとこで折れたりするのでオススメできません
下顎の切歯が伸びすぎるパターン以外にも、上顎の切歯も伸びたり曲がったりと色んなパターンがあります
切歯の役割は牧草を切断することなので、このような不正咬合の子たちでは牧草が食べれない、もしくは食べにくい場合があります
牧草代用ペレットとして、
このような商品も出ていますが、やはり本物の牧草には繊維質の量などで劣りますし完璧な代用品という訳ではありません
(チモシーの極はかなり優秀だと個人的には思いますが)
2番刈りや3番刈りなどの柔らかいチモシーや、オーツヘイなどイネ科の牧草なら何でも良いので、
牧草を食べさせる努力を放棄しないでください
(食べやすい様に牧草を細かく切って与えるなど)
さて、お次は臼歯(奥歯)の話です
上顎の臼歯は頬側に、下顎の臼歯は舌側に伸びる傾向にあります
(それぞれ上下左右の臼歯)
特に下顎の臼歯は正常でもかなり舌に向かって鋭く尖ってるように見えますが、これで正常です
臼歯は、噛み合わせが悪いせいで摩耗せずに過長すると、舌や頬粘膜に刺さってかなりエグることがあります
(右下顎臼歯が舌に刺さって傷つけていた、カット後の様子)
臼歯過長の症状としては、
・食欲が落ちる
・口をモゴモゴ、くちゃくちゃする
・ヨダレが出る
などが見られますが、我慢強い子だとかなり酷くなるまで食欲が落ちなかったりします
逆にすごくナイーブな子だと、少し伸びてるだけで気になって食べなくなることも
臼歯も切歯同様に定期的なカットが必要になります、間隔はこちらもまちまちですが、1ヶ月毎くらいのことが多いかと思います
早い子だと10日毎に切らないと、少し当たってるだけで気にして食べなくなるなんて症例の経験もあります
(頬粘膜側に伸びていた右上顎臼歯の棘をカットしたビフォーアフター)
歯のカットは麻酔下でやる場合と無麻酔でやる場合どちらが良いか?と聞かれることがありますが
・麻酔下
⭕️安全・丁寧にカット出来る
❌頻回の全身麻酔のリスクやコスト
・無麻酔
⭕️比較的安価、麻酔不要
❌ウサギが暴れて怪我をすることがある
と、一長一短で、どちらが優れているという訳ではありません、獣医の修行してきた環境や好みもあると思います
僕は基本的には臼歯切歯共に無麻酔でカットしています
不正咬合は生まれつきの子もいますし、生まれた時は綺麗だったのに、ケージの網などを噛みまくってたら途中からゆがんできてしまったという場合もあります
このように不正咬合がある子は歯根も正常ではないことがほとんどのため、歯根膿瘍や鼻涙管閉塞も起こりやすいですが、それはまた別の記事で
綺麗な歯根