うさぎの鼻水・クシャミ・涙…スナッフルについて

うさぎと暮らす人なら、聞いたことある方も多い?スナッフルという単語

これは病名ではなく、鼻水・クシャミ・涙など一連の症状の俗称になります
スナッフルという病気がある訳ではありません

鼻水
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鼻水や涙を拭うので、手先に毛束が出来る
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原因としては
①感染(細菌・真菌・ウイルスなど)
②歯根の不正
③異物(牧草の粉末など)
④腫瘍
などが挙げられます

最も多いのは細菌感染、その中でもPasteurella multocida(パスツレラ)の感染が一番多いとされています

さらに感染が鼻腔から拡がっていくと、涙や前庭障害に繋がっていくこともあります


前庭障害について詳しくはこちら
ウサギの斜頸、眼振、ローリング…前庭障害について

また、鼻涙管とは目と鼻を繋いでる管になり、目で作られた涙の一部はここを通って鼻水として排泄されます
私たちが泣く時、鼻水も増えるのは鼻涙管を伝って出てきてるからです


涙が出ている時は他にも色々原因が考えられます

クシャミや鼻水の有無、食欲はあるか、目は痛そうではないかなどを見て総合的に考えます

上顎臼歯(上側の奥歯)の歯根が不正なために炎症や感染を起こしてスナッフルの症状が出る時もあります
正常なうさぎの歯根と比べて揃っていない、ガタガタしているのがレントゲンで分かります

正常像
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症例❶
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症例❷
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牧草の粉などの異物が入ってクシャミ、鼻水を引き起こすこともあります

これらの感染・歯根の不正・異物はそれぞれが独立して起きるばかりでなく、複合的に病態が絡まっていることも多いです

診断・治療
軽症であれば、診断的治療として抗生物質の投与を行い反応を見ることもありますが、可能であれば投与の前に細菌培養薬剤感受性検査(どんな細菌が居て、どんな抗生物質が効くのかを調べる検査)を行なった方が良いです
うちのうさぎで検査を行なった時もありました

重症例や慢性経過の例では、レントゲンで歯根や鼻腔内の異常が無いかを調べます
骨変形を起こして鼻腔内が白くモヤっと見えることがあります

症例
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正常
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まずは抗生物質の全身投与や点鼻、鼻涙管洗浄、ネブライジング(薬の成分を気化させて充満した部屋の中にしばらく入れておき、吸入させる治療法)などの内科治療で反応を見ます

ただ、慢性経過の例では反応に乏しく、再発することも多いです
上手くいかない原因として、慢性炎症による骨破壊、重度の蓄膿、肉芽腫、異物、腫瘍などが考えられます

こういった場合は、レントゲンよりもさらに詳しく調べる為にCTが必要になります
その後、鼻腔内の開通や洗浄・生検などを目的とした鼻骨切開術を検討することになります
当院にはCTは無いため、このような場合は近隣病院をご紹介させて頂くことになります

鼻骨切開術(円鉅術)の経過を写真付きでまとめた飼い主さんのブログがとても参考になりますので、気になる方は一度ご覧になってください(許可は頂いてます)
うさぎの鼻骨円鉅手術

かくいうウチのうさぎも、細菌検査で適した抗生物質の内服や点鼻、鼻涙管洗浄などの内科治療を行っていますが反応が悪く悩んでおります…
おそらく牧草の粉が入ってるのだと思うのでCTで評価すれば良いのでしょうが、症状がそこまで酷くないのと、乳腺腫瘍の手術を数ヶ月前にしたばかりでまた手術するかと言われると、うーん…という感じです

程度や年齢、状況によっては、内科治療で症状を緩和しながら付き合っていくのもありかなと個人的には思っています

ただ、重症例で鼻が詰まって息するのも苦しそうなどの場合は、まよわずCT・オペを検討すべきでしょう

最後に鼻腔内腫瘍について
うさぎにおいては報告が非常に少なく、未だわからないことが多いです
診断にはCTが有用です

番外編として、くしゃみをしているうさぎの鼻周りや陰部周りが赤くなってきたら、トレポネーマ(うさぎ梅毒)感染症が疑われます

病態・原因・症状の程度など、スナッフルと一言で言ってもその実態は様々です

うさぎに少しでも快適な生活を提供できるよう、一緒に考えていきましょう