うさぎのオシッコが赤い⁉︎血尿で考えられることについて

※生々しい写真が沢山出てくるので、苦手な方はご注意ください。

「うちの子のオシッコが赤いんです」

うさぎの飼い主さんから、こういったご相談を受けることはとても多いです。ただ、結論から言うと、うさぎの赤いオシッコは必ずしも血尿とは限りません。食事や体調によって赤〜オレンジ色のオシッコが出ることもあれば、本当に血液が混じった血尿のこともあります。

そして、本当に血尿だった場合は、その背景に重大な疾患が隠れていることも珍しくありません。特にメスのうさぎでは子宮疾患の発生率が極めて高く、症状なく進行することも多いため、「血尿かな?」と感じた時点で、できるだけ早く動物病院で評価してもらうことを強くお勧めします。

1. 見た目だけで判断するのは難しい

赤い尿を見たときに飼い主さんが気にされるのは「これは血か、ただの色か」という点ですが、実はこれは見た目だけでは獣医師でも区別がつかないことがあります。

そのため、尿検査・触診・画像検査などを組み合わせて、本当に血液成分が含まれているのか、含まれているならどこから出血しているのかを評価していきます。

 血尿であれば「様子を見て大丈夫」なケースはほぼない

「色が薄ければ大丈夫」「一度きりだから様子を見よう」と考えたくなるお気持ちはとてもよく分かります。しかし、うさぎはギリギリまで体調の悪さを隠す動物です。元気そうに見えても、体内ではかなり病気が進んでいることがあります。

赤いオシッコ・血尿を疑った時点で、できれば数日以内に一度受診し、評価を受けることをお勧めします。急性の多量出血(後述の子宮静脈瘤など)であれば、1-2日で命に関わることもあります。

2. うさぎの血尿、主な原因

うさぎの血尿の原因はさまざまですが、当院での経験を踏まえて多いものを挙げると、おおむね以下のようになります。

  • ① 子宮疾患(メス)
  • ② 尿路結石・膀胱結石
  • ③ 細菌性膀胱炎

2-1. 子宮疾患 — メスうさぎで圧倒的に多い

どれくらい多いの?

メスのうさぎは非常に子宮疾患に罹りやすい動物です。報告にもよりますが、3歳の未避妊メスの約50%、5歳では約80%が何らかの子宮疾患を抱えているとされており、当院の日々の診察でも、未避妊メスの半数近くは子宮疾患で亡くなる、というのが正直な肌感覚です。

具体的にはどんな病気?

ひと口に「子宮疾患」と言っても、実際には複数のタイプがあります。当院でこれまで経験した中でも、以下のような病気が見つかります。

  • 子宮内膜腺癌:うさぎの腫瘍の中でも発生率が最も高く、ある報告では全腫瘍中21.1%を占めるとされます。
  • 子宮内膜増殖症:腺癌と併発することも多い、いわば腺癌の前段階の病変です。
  • 子宮水腫:子宮の中に水分が大量に貯留する病気。子宮が巨大化し腸を圧迫することで食欲不振の原因にもなります。
  • 子宮蓄膿症:犬では有名ですが、うさぎでは比較的稀です。
  • 子宮静脈瘤:子宮の血管が嚢胞状に拡張・破綻して急性多量出血を起こす病気。若齢でも起こり得ます。

『子宮腺癌』怖いのは症状が出ないこと

子宮腺癌の特に厄介な点は、進行がゆっくりで、初期にはほとんど症状が出ないところです。食欲不振・血尿・呼吸が苦しそうなどの症状が現れた頃には、すでに腹腔内でかなり腫瘍が大きくなっていたり、肺などに転移していたりすることも珍しくありません。

【症例】無症状のまま水面下で腫瘍が進行していたうさぎ。レントゲン上で腹腔の約半分を子宮が占めており、子宮腺癌のカルシウム沈着像が白く写る。骨と腸管に転移していた。

実際、当院でも多発性肺転移肺野に複数の白い丸)が見られ、手術適応外となってしまった子や、子宮の腫瘍によって腹水が溜まり、お腹がパンパンになって来院された子など、症状が出てから来院されたケースでは厳しい状況になっていることが多くあります。

【症例】子宮腫瘍からの多発性肺転移が疑われるうさぎ。肺野に同じくらいの大きさの白い丸が複数見られる。肺転移を起こしているとオペができない

【症例】子宮腫瘍による腹水貯留の術前・術後。体重2.2kg、腹囲膨満が顕著。腫瘍はかなり腫大・癒着しており、全てを取り切ることは出来なかった。腹水抜去・子宮腫瘍摘出後は体重1.2kgになり、一時的に元気を取り戻したが術後1ヶ月程で亡くなってしまった。

早期に発見し、オペが行えた場合は基本的には予後良好なことが多いので、未避妊の中高齢のうさぎさんは一度健診を受けてみることをおすすめします。

【症例】無症状だったが、健診で子宮の腫瘤が見つかった。腺癌だったが、早期にオペが出来たので、予後は良好だった。

急性出血が出る『子宮静脈瘤』

「血尿」というよりも真っ赤な血そのものが陰部から出る、というご相談で来院されるケースもあります。子宮の血管の一部が瘤状に膨らみ、それが破れて出血する子宮静脈瘤という疾患です。若いうさぎで急性の多量出血が出た場合は静脈瘤を疑い、緊急のオペが必要です。様子見してしまうと、出血多量で数日で亡くなってしまう可能性があります

【症例】子宮静脈瘤。子宮血管が嚢胞状に拡張し、破綻すると急性多量出血を起こす。早期に外科手術を行えれば予後は良好。

巨大化しやすい『子宮水腫』

出血を起こすのは稀ですが、子宮の中に水が大量に溜まって膨らむことで、胃腸を圧迫し食欲不振になることがあります。

【症例】子宮水腫 — 術前と術後。腸を圧迫していた巨大な子宮を摘出し、予後は良好だった。

2-2. 尿路結石

うさぎの結石は「炭酸カルシウム結石」 オスの方がハイリスク

犬猫ではストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石が多いですが、うさぎではほとんどが炭酸カルシウム結石です。そして、犬猫のストルバイト結石とは異なり、食事を変更しても結石を溶かすことはできません

オスは尿道が細く、結石が尿道に詰まると尿道閉塞(オシッコが全く出せない状態)になり、命に関わる緊急事態となります。メスは尿道が太いため、結石ができても自然に排出されることもありますが、大きな結石は当然詰まる可能性があります。

【症例】尿道結石により排尿困難になっていたオスうさぎ。尿道切開により結石を摘出し、予後は良好であった。

症状の出方には個体差がある

同じ膀胱結石でも、症状の現れ方はその子によってかなり違います。尿に血が混じってるという主訴で来院される子もいれば、食欲不振だけが主訴で偶然見つかる子、尻周りが汚れるようになったという主訴の子、無症状で他の検査の途中で見つかる子もいます。

尿路結石でそこまで激しい出血を起こすことは多くありませんが、結石が出来てから長く経っている場合、尿路の炎症が激しくなり出血量が増えることもあります。

【症例】膀胱結石による真っ赤な血尿と摘出した結石。来院時、ぐったりした状態でした

2-3. 細菌性膀胱炎

子宮疾患や結石ほど多くはありませんが、細菌性の膀胱炎によって血尿が出るうさぎもいます。「血尿が出る」「トイレに良く行く」といった主訴で、結石も子宮疾患も見当たらない場合に疑います。

通常は抗生剤の投与で改善することが多いのですが、最近は一般的に使われる抗生剤(エンロフロキサシンなど)に耐性を持つ菌も出てきており、効きが悪い時には尿の培養検査で原因菌と効く抗生剤を調べてから治療方針を決めることが望ましいケースもあります。

3. 予防 — できることはたくさんあります

3-1. メスうさぎの避妊手術を前向きに検討する

ここまで読んでいただいた通り、メスのうさぎでは子宮疾患の発生率が非常に高く、子宮腺癌は症状が出にくいまま進行し、進行してからの手術はリスクが大きく上がります。

一方で、若く健康な状態で予防的に避妊手術を受けておけば、子宮疾患のリスクを無くすことができます。

「出産経験があると子宮疾患になりにくい」と仰る方もいらっしゃいますが、当院で診ている範囲では、出産経験の有無と子宮疾患の発生率に明確な相関はなく、出産経験のある子でも普通に子宮疾患になります。野生下で妊娠・出産を繰り返してる場合はホルモンバランスが保たれ、子宮疾患になりにくいようですが、飼育下で数回妊娠・出産をしても子宮疾患の発生リスクは下がらないと考えておくべきでしょう。

3-2. 食事を見直す 

結石の予防の観点では、食事中のカルシウム量が重要になります。

成うさぎの主食はイネ科の牧草(チモシー、オーツヘイ、オーチャード、イタリアンライグラスなど)が基本です。アルファルファはマメ科で、カロリーもカルシウムも多く、成長期や妊娠・授乳期向けの牧草です。成うさぎに与え続けると、結石のリスクを上げる可能性があります。

ペレットも商品によってはカルシウム含量が多いものがあります。結石歴のある子や濃いオシッコの子では、低カルシウム(0.5%以下くらいが目安?)のものを、そうでない子でも0.6%以下のものを選ぶなどの配慮をすると良いでしょう。

また、野菜もカルシウムを多く含むものがあります。ちょっと食べたくらいで変わるものではないですが、日常的に食べ続けてると結石に繋がるかもしれません。詳しくはウサギのハート先生が書かれた記事がわかりやすいです。  http://usagi-no-heart.jp/veg/

3-3. 普段のオシッコ・トイレを観察する

血尿は、ある日突然真っ赤になることもあれば、薄い赤色がじわじわ続くこともあります。日頃から以下のような点に注目しておくと、変化に気付きやすくなります。

  • オシッコの色(黄〜オレンジ〜赤茶〜濃い赤、いつもと違わないか)
  • オシッコの量・回数(極端に増減していないか)
  • オシッコの状態(ザラザラ、ドロドロ、白く濁る、血の塊が混じる など)
  • トイレ以外で漏らしていないか、お尻が汚れていないか
  • 排尿時に痛そうにしていないか、踏ん張ったまま長時間出ない様子はないか

3-4. 定期検診(うさドック)でこっそり進行する病気を早期発見

子宮疾患も結石も、初期にはほとんど症状が出ません。「血尿が出てから病院」では、すでにかなり進行していることも珍しくありません。

当院では、症状が無いうちから定期的に身体検査・レントゲン・血液検査・尿検査などを行う「うさドック」をご用意しています。半年〜1年に一度の健診として、ぜひご活用ください。

4. すぐに受診してほしいサイン

最後に、「これが出たらすぐ受診」というサインをまとめておきます。特に下記に当てはまる場合は、様子を見ずにその日のうちにご相談ください

  • 真っ赤な血尿が出ている、または血の塊が混じっている
  • 陰部から血そのものが滴っている(子宮静脈瘤・子宮疾患の急性出血の可能性)
  • 食欲が落ちている/元気がない(うさぎの食欲不振は要注意)
  • 排尿しようとしているのに尿が出ない、踏ん張り続けている
  • お腹が張っている、お尻周りがいつも濡れて汚れている
  • 呼吸が早い・苦しそう(肺転移や貧血の進行の可能性)

うさぎは弱っていることを隠す動物なので、「元気はあるけど食べない」「元気はあるけど血尿が出る」という状態でも、体内では病気がかなり進行していることがあります。「元気はあるんですけど…」とよく言われますが、元気そうに見えるうちに早めに受診していただくことが、最終的にその子の予後を大きく変えます。

5. 当院での対応について

白兎どうぶつ病院では、血尿でご相談いただいた場合、その日のうちに画像検査・尿検査・血液検査までは基本的に院内で対応可能です。

結石や子宮疾患で手術が必要と判断した場合も、当院にて麻酔・手術を行います。摘出した組織は外部の病理検査機関に依頼し、結果を踏まえて術後のフォロー方針をご説明します。

最後に

「うちの子のオシッコが赤い」というご相談から始まり、子宮疾患・結石・細菌性膀胱炎まで、お話を進めてきました。

どれも早期に発見できれば、選べる治療の幅が広がります。そして、メスうさぎの避妊手術や日々の食事管理・観察など、飼い主さんができる予防・早期発見の取り組みもたくさんあります。

少しでも「いつもと違うかも」と感じたら、自己判断で様子を見ず、お気軽にご相談ください。

【参考】

・エキゾチック臨床 vol.20(学窓社)/ウサギの医学(緑書房)

・本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症例の診断・治療方針は実際の診察の上でご相談ください。