当院における、うさぎの避妊去勢手術について

当院ではうさぎの女の子については避妊手術を強く推奨、男の子に関しても去勢手術を基本的には推奨しています。

それぞれの生殖器関連の疾患については別の記事で詳しくご紹介してますので、そちらを参考になさってください。

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こちらの記事では、当院における避妊去勢手術の流れをご説明致します。

術前検査

手術の前には、レントゲン検査と血液検査を必ず行わせて頂いております。

麻酔をかけるにあたって、腎機能・肝機能は問題ないか、貧血は無いか、胸腹部に明確な異常はないか、などを確認します。

検査から1ヶ月以内に手術の予定を組みます。遠方で検査のためだけにいらっしゃるのが難しい場合、手術当日に検査を行うことも可能です。

検査費用は税込で血液検査:8800円(全血球計算+生化学7項目)、レントゲン:7150円(2方向)となっております。

手術当日〜お迎えまでの流れ

当日の午前中にお連れ頂き、翌日の診察時間内にお迎えになります。普段食べてるペレットを1食分ご持参ください。

手術の料金は、避妊手術が49500円、去勢手術が38500円になります。

術後は、女の子だけエリザベスカラーを付けてお返ししています。柔らかいソフトカラーなので、プラスチックのものに比べて鬱陶しさはマシだと思います。

術部は、溶ける糸で皮膚と皮膚を繋ぎ合わせるように縫うので、表面に糸がほぼ出てない状態でのお返しになります。その為、術部をあまり気にしない子がほとんどなので、お家で様子を見ながら、本人が気にしてなさそうならカラーは付けてなくても良いよとお話ししています。カラーを付けてると、盲腸便が食べられず汚れてしまうので、付けずに済むならそっちの方が良い為です。

ただ、中にはめちゃめちゃ気にして術部を弄りまくる子もいるので、そういった場合は付けっぱなしにしてもらった方が良いでしょう😅

女の子も男の子も、2週間後に術部のチェックに来て頂きます。

⇧プラス工房のソフトエリザベスカラー。レンタルなら1760-1980円、お買い上げなら3530-3960円になります。

⇧避妊手術後のイメージ。子宮周りの脂肪の付着具合などにより、術創の大きさは多少変わります。

⇧去勢手術後のイメージ。陰嚢を解ける糸で縫合するので抜糸は不要です。

麻酔

以下、少しマニアックな話なので読み飛ばしても良いです。笑

うさぎの麻酔はリスクが高いとよく言われます。実際に麻酔による死亡率を調べた研究では、健康な個体でも犬:0.05%、猫:0.11%に対し、うさぎでは0.73%というデータがあります。

その可能性を少しでも下げるために、当院で手術を行う際に必ず実施していることが3つあります。

  • v-gelによる気道の確保:呼吸のモニタリングと呼吸停止時に人工呼吸が実施可能に
  • ケタミン・リドカインの持続点滴による維持麻酔:鎮痛作用により吸入麻酔薬の使用量を減らし、安定した麻酔管理ができます
  • 呼吸停止時の緊急処置の準備:呼吸促進剤ドキサプラムの静脈投与を素早く行えるよう準備しています

うさぎの麻酔が難しい理由の一つに、犬猫と違って気管挿管が容易でなく、気道確保が難しいという解剖学的特徴があります。その為、うさぎの麻酔ではマスクが使われることが多いのですが、呼吸のモニタリングが出来ない・呼吸が止まった時に人工呼吸がきちんと行えないという弱点があります。

そこで当院では、獣医療用声門上気道デバイス v-gelを使用しています。柔らかいカフが喉頭を覆うことで気道を確保することが出来、呼吸のモニタリングと停止時の人工呼吸が出来るようになりました。

また、手術を行う時は全頭静脈確保を行い、ケタミンの持続点滴により麻酔を維持しています。

耳介辺縁静脈からルートを取るので、一部毛刈りさせて頂きます。

獣医療ではイソフルランというガス麻酔がよく使用され、導入・覚醒が早く筋弛緩作用もあるので非常に使い勝手が良いのですが、気道刺激性があるため、これ単独で使用するとうさぎが息をこらえてしまい、1分ほど呼吸を止めてしまうこともあります。

ケタミンの持続点滴により、イソフルランの使用量をかなり減らすことができ、イソフルラン単独で麻酔の維持をしていた時に比べて、麻酔管理がかなり安定するようになりました。

また、ケタミンと同時に局所麻酔薬であるリドカインも持続点滴しており、避妊手術では開腹時にリドカインを腹腔内投与もすることにより、強い鎮痛効果が得られ、術中に痛みに反応することがほぼ無くなり、術後の食欲元気の立ち上がりも早くなりました。

静脈を確保しているので、万が一呼吸が止まった際にも呼吸促進薬ドキサプラムを静脈から素早く入れることができます。

獣医師向けに、当院の麻酔プロトコルを載せておきます。僕自身は麻酔に詳しい訳ではないので、書籍・論文を読んだり麻酔科の先生に聞きながら現在はこうしているという話なので、あくまでご参考程度に😅

メデトミジン0.2mg/kg sc 10分後にケタミン5mg/kg・リドカイン2mg/kg ivで導入

乳酸リンゲル20ml+ケタミン2ml+リドカイン2% 1mlを混和し、5ml/kg/hでCRI開始し、麻酔維持

開腹後、リドカイン2%を0.125ml/kg 4倍希釈して腹腔内投与

術後、アチパメゾールをメデトミジンの半量でim 乳酸リンゲル+リドカイン5mg/kg/hで翌日のお迎えまで維持

血管シーリングデバイス TESSの導入

従来は卵巣子宮・精巣周りの血管を糸で結紮してから切断していたのですが、血管シーリングデバイスを使うことにより、血管の処理をより素早く確実に行うことが出来るようになりました。

これにより、手術・麻酔時間の短縮に繋がっています。

まとめ

術前検査で問題がなく、いくら周術期の管理に注意を払ったとしても100%安全な麻酔というものはなく、犬猫に比べて麻酔のリスクが高い生き物であるというのは事実です。

しかしながら、避妊去勢手術によって得られるメリットも非常に多く、メリットとリスクを天秤にかけて最終的にはご家族に判断していただくことになります。

その判断の一助に、この記事がなれば幸いです。

避妊去勢手術のご予約はお電話、もしくは院内にて承っております。術前検査のみのご予約はweb予約システム:wonderの方からでも出来ます(https://wonder-cloud.jp/hospitals/hakuto-ah_katano/reservations